まかない!
まかない!
まかない!
まかない!
まかない!
まかない!
まかない!
シンプルなトマトソースとリコッタサラータ。

最近、イタリア料理とは?というテーマを概念的な角度から、自分なりの答えをまとめたが、

「イタリア料理をつくるには」というテーマを「味覚」「味の方程式」という角度から論じた文があるので、敬意をもって紹介してみたいと思います。

これが書かれたのは1996年、今から30年前。
書いた方は僕が初めて働いた六本木のイタリア料理店のシェフです。
この文を読んだのは僕がまだ10代の頃で、難しく感じましたが、今読んでもやはり難しく感じる部分もありますね。

「イタリア料理とは、
イタリア料理の味覚の韻を踏むことなのである。」

この文は30年前から今に至るまで、常に僕の意識の中にある言葉で、特にイタリアのレシピを見ずに料理を作ったりする時は特に意識しています。

イタリア料理を志すなら、まずはイタリア料理を(出来れば現地で、)たくさん食べることですね。

〜味覚を構成すること〜

「味覚」は記憶であり、経験であると思う。従って、まったく個人的なことであり、一般論として、なかなか語りつくすことはできない。それは、一般的な料理というものが存在しないからだ。

これは、コミュニケーション網の発達によって、各国のさまざまな情報を容易に知り得る条件が整っても、移動交通が時間的にいかに短縮され、自分自身で体験することがむずかしいことではなくなった今日でも、世界各国の料理が確固たる味覚を保有させている理由のひとつだと思う。

その一方で、十九世紀後半からの世界的な料理の動きは、植民地文化の吸収と移民文化の拡散を繰り返していて、味の国境はなくなり始めているのもまた、事実だ。多民族国家を形成するアメリカ合衆国はその代表であり、自国の伝統を崩壊させてまでも、輸入文化をあたかも自分たちの文化として昇華させてしまった東京においてと明らかだろう。

こうした食の凝縮と拡散の中で地球をひとつの国家として考えてみると、暴言を恐れずに言わせてもらえば、その代表的料理のひとつはパスタではなかろうか。パスタ、すなわち「穀類を粉状にして水で練る」という作業は、不思議なことに世界同時発生的に起こっていたからだ。日本のそば、うどんの類、中国の麺、メキシコのトルティーヤなどもそうである。

さて、この本の目的は、イタリア料理の技術を披露することではない。このパスタという食材を料理することを通して、「イタリアの味」というものを、日本に居ながらにしていかに会得するかにある。

料理は「香り」であり、「色」であり、そして「欲望」である。故に、幾万通りの快楽を私たちに喚起させてくれる。その料理を作るうえで大切なのは、味覚を構成することである、ことだと、私は思う。であるから、私の専門であるイタリア料理を日本で入手出来得る食材で表現するにあたって、この「味覚の構成」を最も重要なこととしている。

何をもってイタリア料理とするのか。それは、イタリア料理の味覚の韻を踏むことなのである。

「料理する」ということは、味覚の記憶や経験のための手段である。従って、料理を覚える過程は、科学の定理や数学の方程式を学ぶように理解できるのである。

と同時に、料理における想像力についても学び取ってもらえればと思う。冒頭でも述べたように、味覚は各人の経験であり、記憶である。味覚を構成するルールを基に作られた料理に、命を吹き込むのは作る人の想像力にはかならないからだ。

想像力は素材、香草、香辛料などと共に百花繚乱に変化する。すなわち、百人が作るにんにくとオリーブオイルと唐辛子のパスタには、百の異なったおいしさが存在する。

味覚を構成する方程式の正解は、ひとつだけではないのだ。

私たちは学校で俳句や短歌を学んだ際に、「写生」ということを教えられた。つまり詠まれた句や歌から情景が思い浮ぶように、ということだ。私は同じように、料理における写生=想像力ということも、この本の中で提案していきたい。

今は亡きフェデリコ・フェリーニは、愛妻ジュリエッタ・マシーナの作った好物のトマトとバジリコのスパゲッティを食べながら、こう語った。

「料理人を志す人は、時代の色と香りを知覚するべきであろう」

私はこれからも、煩悩に訴える料理を、作り続けていきたいと思う。

澤口知之

パスタブックより

#パスタブック#イタリア料理
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